よく見かけるこれらの数字。
「本当か?」
と疑いたくなるほど悪い結果なので、
データの出元を探してみたら、
衝撃の事実が発覚しました!
もくじ
起業後の生存率データの調査対象は、なんと製造業限定だった!
とにもかくにも、まずは、
元データの集計対象に関する注意書きをご覧ください。
統計の設計上、集計対象は製造業に限られ、
また従業者4人以上の事業所に限定されていることに留意が必要である。出典:2006年版「中小企業白書」
・・・え、製造業?
しかも従業員4人以上に限定?
現代起業の主流とも言える、
インターネットをつかって(ブログやSNSなどのメディアを運営して)、
パソコン1台で個人で起業する情報通信業には、
まったくあてはめることができないと判明!
(しかも84〜02年頃の調査結果だし、
91〜93年のバブル崩壊とカブってるし・・・)
(さらに言うと、
日本でブログが普及しはじめたのは2002年頃・・・)
なので、このデータをもとに言えることは、
以下の2つくらいでしょう。
- 個人の製造業での起業は厳しい
- 経営年数が増えると、経営が安定する傾向にある
そもそも製造業で起業する場合、
工場などの設備投資が必須なので、
多額の借金をしなければいけません。
さらに製造業の利益率は、業界平均で25%程度。
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出典:経済産業省「平成10年 商工業実態基本調査報告書」
倒産した個人事業主は、
経営理論も学ばず、
高度経済成長期+バブルで貯めた貯金をはたいて、
夢だけで工場を立ち上げ、
吹けば利益が飛ぶような危うい経営をしていた・・・
なんてことが、想像に難く(かたく)ありません。
これに対し、現代のパソコン1台で起業するスタイルは、
借金をする必要もなければ、
従業員も雇う必要もないし、
利益率も90%を軽く超えます。
このように、製造業と情報通信業では、
赤字のリスクや、経営のむずかしさが大きくことなります。
以上により、製造業の生存率データ(しかも20〜30年前)を、
インターネットをつかった情報通信業の起業にあてはめ、
「やれ成功がうんぬん、
やれ失敗がうんぬんと語ることはおかしい」
というわけです。
ではそろそろ、
さまざまな詭弁を生んだ、生存率データのお目見えです。
開業年次別 事業所の経過年数別生存率
出典:2006年「中小企業白書」
たとえば、起業から2年経過後の生存率を求める場合、
1年経過後の生存率62.3%に、
2年経過後の生存率75.9%をかけて、
62.3 (%) *75.9 (%) = 47.3 (%)
で、2年経過後の生存率は、47.3%となる。
この要領で起業5年後、10年後の生存率をもとめると、
- 5年後:25.6%
- 10年後:11.6%
となり、ネット上でよく見かける生存率と、
おおむね近い値が算出されます。
たしかに良い数字とは言えません。
でも製造業です。
むしろ、見る側からしたらかなり悪い数字です。
でも製造業です。
いいや、5年後の生存率は82%が正しい!
これでは起業を目指す人への印象が悪すぎるので、
このデータへのカウンター要素として繰り出されているのが、
以下のデータです。
出典:2011年「中小企業白書」
このデータによると、
- 5年後の生存率:82%
- 10年後の生存率:70%
となっています。
しかしこのデータには欠点があります。
- 業界ごちゃまぜ
- 個人事業主だけじゃない
という2点です。
もともと生存率が高い傾向にある法人企業や、
もともと生存率が高い業界もふくまれています。
個人が情報通信業で起業した場合の生存率を語るには、
いささか適していないと言えます。
じゃあ、けっきょく何を見るべきなのか?
残念ながら都合の良いデータはなく、
情報通信業の廃業率から推察するしかないですね。
出典:2017年「中小企業白書」
上記データのとおり、情報通信業の廃業率は、
3%後半〜5%となっています。
(とはいえこの数値も、
個人、法人の区別がないことに注意)
この廃業率を参考にして、
毎年5%廃業を5年くり返すと・・・
95 (%) *95 (%) *95 (%) 95 (%) *95 (%)=77.4%
起業5年後の生存率は、77.4%とでました!
ちなみに、10年後の生存率は59.9%です。
毎年5%で固定するのもおかしな話なので、
あくまで参考程度ではあります。
しかし前章のデータと、
はからずも似たような結果になったので、
- 起業5年後の生存率:8割
- 起業10年後の生存率:6〜7割
が、まぁ実態に近いのではないかとおもいます。
10年で、10人に6〜7人は生き残るってことなので、
特段悪い数字ではないですよね。
やっぱり例のデータの、
「起業1年後に4割が廃業」
は、インパクト強すぎですね。
何度も言いますが、製造業の話です。
生存率がすべてじゃない
起業5年後の生存率が約8割という、
それらしい数値はでてきたものの、
「5年後に2割は廃業するってことだから、
そんなのリスクがありすぎる!」
これが一般の人の反応だとおもいます。
しかし、そもそも廃業しない事業なんてありません。
全事業の平均廃業率は3.5%で、
サラリーマンだろうが、起業家だろうが、
毎年平均3.5%は会社がなくなっているのです。
(もちろん経営手腕にもよりますが)
そもそもこのご時世、
終身雇用ができるほど長く続く事業なんて、
誰にもつくれません。
20年も30年も通用する事業モデルが終わりを迎えたからこそ、
終身雇用制度は崩壊したからです。
これからは、
小規模なビジネスをいくつも立ち上げる起業がスタンダードになってくるでしょう。
(というかすでにそうなってる)
たとえば、
ブログで稼いでいた人がYouTubeでも稼ぐようになったり、
物販(Amazonせどり等)で稼いでいた人が、
ブログでも稼ぐようになったりといった感じです。
ビジネスの流行り廃りが急激に早くなったので、
1つのビジネスしかやっていないのは、
リスクが高いのです。
何度も起業するのが、起業家の本質
「卵は1つのカゴに盛るな!」
という投資の金言も、
おなじこと(1つだけはリスクが高い)を伝えようとしています。
手に入れた10個の卵を1つのカゴに入れて、
そのカゴを落としてしまったら、
10個ぜんぶが割れてしまいますよね?
これとおなじで、
1つのビジネス(カゴ)しかやってないと、
いくら収入(卵)が増えたとしても、
そのビジネスが廃れたら(カゴを落としたら)、
収入がゼロになるリスクと隣り合わせということです。
反対に、
複数のビジネスをやっていれば、
そのうちの1つがダメになっても、
即座に食べていけなくなることはありません。
5年後の生存率、77.4%?
じゅうぶんじゃないですか!
「1つのビジネスだけで一生食べていく」
という既成概念から解放されましょう。
金銭的なリスク(借金)なしでできるビジネスがたくさんある時代なので、
黒字は減れど、赤字にはなり得ません。
そういったビジネスを2つ、3つ立ち上げ、
うまくリスクヘッジ(リスク回避)しながら経営をしていく。
これが次世代の起業家の、あるべき姿ではないでしょうか?
ではでは(`・ω・´)ゞ
【参考文献】
- 2006年「中小企業白書」第1部ー第2章ー2節
- 2011年「中小企業白書」P187
- 2017年「中小企業白書」P69
- 経済産業省「平成10年 商工業実態基本調査報告書」第2章
(個人事業主の…)