背丈20〜30センチの小人が、
群れをなして舞い踊っている姿を想像すればわかるように、
愛くるしいイメージが定着している妖精。
妖精たちと数年暮らした少女の足の指が、
すり減ってなくなってしまった・・・!
という逸話もあるくらい、歌と踊りがだぁいスキ!
しかし、もし、妖精を『癒し』の象徴とお思いなら、
今回、その認識をあらためてみてほしい。
ファンタジー映画でも描写がされるように、
ときに妖精は人間に牙をむき、
その攻撃性や残忍さをあらわにするのだ。
妖精というのは、人間の対応次第で、
良き隣人にも、悪しき隣人にもなる、
ご都合主義で気まぐれな存在なのである。
そんな妖精の特徴をよーくとらえたエピソードを、今回ご紹介したい。
ではさっそくどうぞ。

妖精たちは歌い、踊り、気まぐれでアゴを切ったりくっつけたり
アゴが伸びすぎた男。
その見た目から気味悪がられ、
里からはなれた場所でひっそりと暮らす。
ちなみに手先はめっちゃ器用やで!

ある日、古墳のそばに座ってぼんやり空を眺めていると、
どこからともなく歌が聞こえてくる。
「月曜、火曜、月曜、火曜・・・月曜、火曜!」
歌はやむ気配がない。
気になったので、周囲を探ってみると、
どうやらその歌のぬしたちは古墳のなかに居るらしい。
おそるおそる隙間からなかをのぞくと・・・
アゴ男、古墳内で妖精らしき小人たちが歌い踊るのを発見。

たのしくなったアゴ男、いっしょに歌う。
「月曜、火曜、月曜、火曜・・・月曜、火曜!」
だが、月曜・火曜の無限ループなので、
一向に休日にたどり着けない。
ブラック企業ばり、休みなしのルーチンワークに、
アゴ男・・・
ついに飽きる。
たまらず、妖精たちが歌ったフレーズに、
「それまた水曜日!」
という斬新かつ大胆なフレーズを付け足してみた。
アゴ男はたいそう美声だったのもあり、
アゴ男の歌声を耳にした妖精たちはテンション爆上げ。

アゴ男、妖精たちの魔法によって古墳内へ召喚。
アゴ男、妖精たちと打ち解け、
アゴを振りまわしながらはしゃぐ。
宴ののち、妖精が一匹近づいてくる。
アゴ男、アゴガクブル。
しかし、おそれに反し妖精が放ったヒトコト。

アゴ、切ったったで〜
直後、アゴ男は床に転がるアゴを目撃する。
ゴロンゴロン!
「え、マジで?!ヤバ。」
長年つきあってきたロングアゴゥとおさらばできた喜びで、
ドーパミンが過剰放出されたのか、
クスリをキメたかのように意識を失う。
「あふ・・・あふふふふ」

ほわんほわんほわん・・・

気づくと朝になっていた。
(どうでもいいことなのだが、牛に囲まれていた)
おそるおそるアゴに手をやると・・・


“元”アゴ男、テンション爆上げ。
里の住民に奇跡を触れてまわるが、

え・・・

ちょっと待って・・・

誰?
状態。
アゴが短くなって、いくぶんハンサムに見えたからであった。
自分がアゴ男だとわかってもらうまでに苦心したが、
男がアゴ男だということがわかると、里の住民たちはついにこの奇跡の話を信じ、
そして広めていった。
異邦の地に、元アゴ男とおなじように、
アゴの長き男あり。
長すぎるアゴが原因で食事ができず、
衰弱しきっていた。
あるとき、異邦のアゴ男の母親が、奇跡を聞きつけ里にやってきた。
これに応じる元アゴ男、
自分に起こった奇跡のてんまつを話す。
元アゴ男の話を聞き、希望を持つ母親。
飛び帰り、息子を連れ、

そして息子、古墳なう。
元アゴ男の証言どおり、
「月曜、火曜、月曜、火曜・・・月曜、火曜!」
という奇妙だが楽しげな歌が聞こえてきた。
「それまた水曜日!」
のフレーズも採用され、休日まで少し前進したようだ。
この妖精たちの歌に異邦のアゴ男、アゴを縮めたい一心で、
テンポなんておかまいなしに、
「火曜火曜火曜・・・! バーニングレッド!」
と連呼。
楽しげな歌の雰囲気に似つかわしくない、
ハードコアなデスボイス。
宴をジャマされた妖精たちは・・・
激おこ。
「オレたちの歌を台無しにしやがって!」

異邦のアゴ男、古墳内へ召喚。
しかし元アゴ男のときとは違って、とうぜん歓迎モードではない。
激おこな妖精たちは、元アゴ男のロングアゴゥを運んできて、
異邦のアゴ男のアゴ先にくっつけてしまった・・・!!!
異邦のアゴ男、まさかのシャクレアゴゥが付与される。
そのまま古墳の外へ投げ出される。
アゴがとんでもなくシャクレた息子を見て、母、ガックシガクブル。
奇跡はおきず(いや、ある意味おきたのだが)、
肩を落とし、息子を連れ帰路につく。
ところが帰路の途中、異邦のシャクレアゴ男は、
自身のアゴにつまづいて崖から転落・・・
亡くなってしまったのであった。
シャクレアゴ男は里から出て亡くなるまでのあいだ何度も、
母親にこう漏らしていたという・・・
「妖精の歌を聞きに行こうなんて言うヤツは、アゴが伸びてやがる!」
あとがき
妖精の気まぐれさ、ハードコアさがわかるエピソードであったが、
妖精の話として終わらせてしまうのはもったいないパーリィナァーイ。

どんな話にも、ブログへ活かせることの1つや2つ隠れているものだ。
このエピソードとて例外ではない。
アゴ男と妖精との関係は、
わたしたちブロガーと読者さんとの関係に似ているのだ。
おもしろい記事を書けば、
狂喜し、ファンになってくれ、ときに商品も買ってくれるが、
つまらない記事を書けば、
即離脱し、2度と門戸が叩かれないかもしれない。
したがって、「アゴを伸ばせ!」と渇望されれば、
伸ばさざるを得ない。(実際そうしてきた)
唯一の救いは、アゴを伸ばそうが伸ばすまいが、
読者さんの手によって筆者がシャクレアゴゥにされることはない
ということだ。
読者さんは妖精たちと違って、
ロングアゴゥを接合する魔法をつかえない。
いずれにしろ、筆者はこのエピソードを知り、
アゴが外れるほどの笑い
を追求していくと心に誓った次第である。
もしかしたら、
「腹筋が割れるほどの笑い」
と言ったほうがおさまりが良かったのかもしれないが、
人間誰しもすでに腹筋が割れていて(脂肪が多いか少ないかの違いだけだ!)、
これ以上に割りようがない。
そのため、泣く泣くアゴに狙いをさだめることとした。
ちなみに、シャクレアゴ男の肖像画が手に入ったので、
確認されたい。

参考:ケルト妖精物語(ちくま文庫)
※ケルト妖精物語(ちくま文庫)内のエピソードを、筆者がアレンジしたものです